●馴鹿戯言●

みなさんこんばんは!トナちゃんです!!

タロを山に捨てに行く。

場所は鹿児島、僕は山にタロを迎えに行った。

 

飼い主は僕のおじさん、九州男児アルコール中毒を患っていた

僕の家族がお盆に帰ると夜中お金を漁ったり、パチンコ屋で玉拾いをして得たお金で

お酒を飲む。

夜中踏切で酔いつぶれていると警察から連絡が入り叔父の兄が迎えに行く。

いつも夜中は兄弟喧嘩で僕は違う部屋で寝ていた。

でもおじさんはお酒が入っていない時は、とても優しい

僕が好きな銭湯の券を来る前に買っておいてくれたり

僕の好きなアイドルをおじさんも好きなのでグッズをくれたり、釣りに連れて行ってくれたり

切り干し大根をお湯で戻しただけの一品がとても美味しかった。

 

僕は寝るまでそのおじさんといつも一緒にいた

僕はそんなおじさんが大好きだった。

 

ある時また鹿児島に帰るとおじさんが犬を飼っていた

名前は「タロ」

片耳が自然と折れた雑種の可愛いワンコだった

性格も和やかで吠えることも滅多にない

なんで捨てられたのか不思議なほど偉い子だった

おじさんとタロの共同生活が始まった。

 

散歩は紐などつけずに歩く。

野良猫がちょっかいを出すとその野良猫をおじさんが蹴飛ばして飛んでいく猫。

みているこっちはビックリだった。

 

お風呂に入れると言うので見に行くと

水道の蛇口にホースを繋いで、その先をつまみすごい勢いでタロに当てる、、、。

でもタロは嬉しそうでおじさんも楽しそうに仲良く過ごしているように見えた。

 

でもおじさんはお酒は辞められずにいたので

きちんと面倒を見れず

飼い主としてダメだ(上記のことも含め)と言うことで

叔父の兄と喧嘩になり、なら裏の山に捨ててくる!!

と言ってタロを連れて山に行った

 

僕はそれを見ていたので

子供ながらに飼い主に振り回されるタロが可哀想だ、助けなくちゃとあとをつけた

2〜30分くらい山に登ったところでおじさんが電柱にタロを首輪とリードで短く結び

「ごめんな」と言って降りていくところを見送り、僕は行動に出た

 

タロが愛おしくて、可哀想で

歩けるタロを抱っこして僕は見知らぬ山を降りて行く。

 

おじさんは何で酒を辞められないのか。

きっと、離婚を経験してそこからおじさんは仕事も続かなくなり飲み始めたお酒だけが孤独を埋めたんだと思う。

現状を指摘されても、変えられない。

もし現状が変わってもそれが誰の為か分からずやりきれずにまた飲む。

たまにしか来ない僕らはそれを解決する特効薬にはなれない

 

タロを連れて山から帰り家の前にタロを放すと

「あれ?帰ってきたんか」とにこやかに言うおじさん

 

犬を飼うと決めたシラフの優しいおじさん

酒を飲んで変わってしまうおじさん

 

僕は当時中学生。

自立している年なら鹿児島に一緒に住んでも良いくらい

大好きなおじさんだった。

僕が高校に入った頃アルコール依存症治療で入院していたおじさんは一時帰宅をしてしばらくして

家の寒いトイレで亡くなった。

 

僕は酒が好きで、嫌いだ。

今は僕もアルコールは摂らなくなった。

タロもあれからしばらくして逃げたのか貰われたのかは不明だが居なくなってしまったそうだ。

 

おじさんに、自分がおじさんになってからも会いたかった。

 

僕はまだおじさんの作ったカリカリの切り干し大根の味を再現できない。